記憶
目でみたものは忘れやすくできているけど匂いや音はなかなか忘れることがない。たまにそれで嫌なことを思い出して少し憂鬱になる。もう20歳もとうに過ぎていて、そんな日はお酒を飲んでしまう。
聞き慣れたフレーズを意図的に聞かないようにしたくても不図した瞬間に聞いてしまう。どうしようもない気持ちになり沈んでしまう。
大好きだったあの香水も今はそれだとわかると途端に滅入ってしまう。
どこにいても音や匂いは作られたものであればどこかで使われていて、それから逃れることは困難だったりする。そうして何度もそれらを知覚して記憶と結びつけている。
今、落ち込ませるこれらを、いつか何とも思わなくなるのだろうか。避けてきたものたちとは向き合わなければ変わらないのだろうか。いつも聞いていた音を、匂いをまた受け入れられる日はあるのだろうか。